クリスマス休戦といふ安息日
ちやんちやんこひらがな母に教はりし
冬晴れや誰かハクション大魔王
あれは、湾岸戦争開戦三週間前のこと。
クリスマスにサウジアラビアの前線を慰問してまわった、
ボブ・ホープ一行の特別番組が放送されていた。
五ヶ月の間、なんの娯楽もなしに待機していた米兵たちが、
何もない砂漠の真っ只中でショーを楽しんでいた。
ボブ・ホープがマイクを片手に、
砂の上にすわった兵士たちにジョークを飛ばす。
その間にも、文字通り砂丘を越えて、
新しい部隊がショーを見るため、
隊伍を組んで続々と到着する。
手を打って笑い転げ、
唄に拍手を送る兵士たちをテレビカメラが映し出す。
どの顔も屈託がない。
女性も多い。
そして、どの顔も若い。
無邪気に笑うこれらの若者が、
もしかしたら一ヶ月後には、
命を落としているかもしれないと思ったら、
わたしは涙が止まらなくなってしまった。
番組の最後に、
「聖よしこの夜」の曲が流れ、
兵士たちが和した。