俳句  開かずの戸開けて真白き息あふる
冬桜かくもしづかにたたずめり

開かずの戸開けて真白き息あふる

浅草にどぜう藪そば春近し


<時間>とは、
非情に時を刻み続け、
万物を等しく駆り立てていくもの、
というイメージをもっていた。

ところが、生物学的に時間を見れば、
それは画一的なものではなく、
ネズミの時間、ゾウの時間、ヒトの時間というふうに、
さまざまな時間があり、
物理的な時間だけで測りつくせないという。

おもしろいと思うのは、
心臓が一回打つのに要する時間は、
身体が大きくなるとともに、
体重の0.25乗に比例して長くなっていくという話。

体重5トンのゾウでは、
心臓が一回打つ時間は2秒だが、
30グラムのネズミなら、
その20分の1の時間しかかからない。

心臓は一生の間に200億回打ち、
ゾウはネズミよりずっと長生きなのだが、
こと心臓は両者とも同じ回数だけ打って死を迎えるのだという。

ゆえに、大きい動物の時間はゆったりと流れ、
それに比べると、小さい動物の流れは速い。
これを<生理的時間>と呼ぶそうだ。

人間だって、時間の速さは微妙に違う。
ハワイの人々は万事のんびりしていて、
仕事の遅さかげんに対しては、
こと日本から来た人々には不評である。

しかし、ハワイ生活がすっかり板につくと、
今度は日本へ行ってそのせわしなさに疲れてしまう。
時間で縛られた都会人の生活は、
はたしてヒトという動物のもつ空間やリズムに、
合っているのだろうか。

ハワイや沖縄は世界有数の長寿の島である。
長寿の秘密が、
このリズムの問題と関係あるのではないか、
などと考えたりしている。

バセドー病の友人がいる。
若い頃、彼女とよく一緒に旅をした。

わたしは、行動を開始する前に、
先ず頭の中で段取りを図るタイプで、
それが出来上がるまでは沈思黙考している。
で、絵図が完成すればGOである。

ところが、彼女はとにかく動く。
たぶん、段取りなんてものは彼女の辞書にはない。
たとえば、ホテルに着いて、
先ず、わたしは着替えをして・・・という感じになるが、
彼女はスーツケースを開いて、
なぜか、洗面所に歯ブラシや化粧品をズラリと並べる。

まとめてドンと運べばいいと思うのだが、
スーツケースと洗面所を何往復もするのだ。
ま、みんな各々のやり方というものがあるから、
彼女のやりたいようにやればいいわけだが、
これがもう面白いくらいパタパタと動き廻る。

で、ルーブルのようなところへ行くと、
わたしは気に入った美術品の前から動かなくなる。
他の物はどうでもいいのだ。
ひとめ惚れした作品をしばらく愛していたい。

ところが、彼女は小気味いいテンポで次々眺め、
あのルーブルを半日で見尽くす。

結局、どういうことになるかと言えば、
わたしは、ルーブルだけに一週間を費やし、
彼女はパリ市内の至るところを見学してまわる。

だからと言って、喧嘩になるわけではない。
お互いの性分はガキの頃から承知している。

その彼女が、バセドー病に倒れたのが32歳のときだった。
それで、わたしは彼女のセカセカした行動に納得がいったし、
前述の<生理的時間>に当てはめれば、
彼女はわたしの数倍の時間を生きていたのだと思う。

田中角栄が亡くなられたとき、
立花隆が話していたことが印象に残っている。

彼の生涯を思うとき、
バセドー病が与えた影響というものを強く感じる、と。
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by leilan | 2005-02-01 20:26
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バッカスの神さまに愛されたい
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