俳句  渡り漁夫荷に人形のみやげあり
黒塗りの御重に豆腐針供養

渡り漁夫荷に人形のみやげあり

逢ひみての後夢ばかり恋の猫


以前、ある作家のエッセイを読んで気になったことがあった。

 <ほどなくして、二人は男女関係になった>

これではもう味も素っ気もない、と思うのだ。

 <わけありの仲になる>

といういい言葉があるではないか。
そして、抜き差しならなくなることを、

 <深みにはまる>

なんていう。

夕刻、ワイキキのスターバックスで手紙を書いていたら、
隣席にいた中年の女がふたり(わたしと同年輩・観光客らしい)
大声でこんなことを言ったのだ。

「それで彼女、その男とヤッチャッタの?」

見れば、上等な成りをして、
夫もいれば子供もいるという風情。
それが、いい歳こいて、
<ヤッチャッタ>だなんて言葉を使う。

懲役18年だ!

男と女の秘め事をそんな軽はずみな言葉で表現するから、
だんだんと男に愛想尽かしされてしまうのだ。

女は幾つになっても、
ある程度の慎みとか、たしなみは必要だと思う。

ごめんなさい。
あんまり頭にきたものですから。


ーーーと、ここまで書いて一旦送信したのですが、
わたしが16歳のときにはじめて読んで以来、
心の糧としてきた一篇の詩がありますので、ご紹介します。


    汲む     茨木のり子

 大人になるというのは
 すれっからしになることだと
 思い込んでいた少女の頃
 立居振舞の美しい
 発音の正確な
 素敵な女のひとと会いました
 そのひとは私の背のびを見すかしたように
 なにげない話に言いました

 初々しさが大切なの
 人に対しても世の中に対しても
 人を人とも思わなくなったとき
 堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを
 隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました

 私はどきんとし
 そして深く悟りました

 大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
 ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
 失語症 なめらかでないしぐさ
 子供の悪態にさえ傷ついてしまう
 頼りない生牡蠣のような感受性
 それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
 年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
 外にむかってひらかれるのこそ難しい
 あらゆる仕事
 すべてのいい仕事の角には
 震える弱いアンテナが隠されている きっと・・・・・
 わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました
 たちかえり
 今でもときどきその意味を
 ひっそり汲むことがあるのです


まあ、わたしくらいの年代になると、
女性ホルモンの分泌が衰えてくるせいもあるのだが、
グレイゾーンが少しずつ無くなってくる。
好きと嫌いでしか判断しようとしなくなる。
同時に、周りの視線というものも気にしなくなる。
これが始まると、坂を転げるようにオバタリアンになっていくのだ。

それでいいのなら、ご勝手にだが、
たとうれば、武原はんのように、桂信子のように、
枯れていきたいとわたしは思う。
最後の最後まで、自分が女であることは忘れたくない。
立居振舞はもちろんのこと、
周囲に対して素直な心をもつことは失いたくない。
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by leilan | 2005-02-08 14:44
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