エルサレム空襲警報下のストラディバリウス
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911の数日後、世界のナンバーワン・バイオリ二スト、
『アイザック・スターン(Isaac Stern)』がニューヨークで亡くなられた。
享年81歳だった。

1920年にユダヤ人の子としてロシアに生まれ、
生後まもなくアメリカに移住。
8歳からバイオリンを始めたアイザック・スターンという稀有の天才を語るとき、
忘れてならないのは1991年2月23日に起こった、
エルサレム空襲警報下での演奏会だ。

当日午後6時50分アイザック・スターンが、
ズービン・メータ指揮によるイスラエル・フィルをバックに、
モーツァルトのバイオリン協奏曲第三番の第二楽章を演奏している時のこと。

突然、不気味なサイレンが鳴り響き、
ステージの上に係員が駆け上り、
「みなさん、ガスマスクを着けてください」
と叫んだのだった。

スターン、メータ、イスラエル・フィルの面々が一斉に楽屋裏に去り、
エルサレム劇場を埋めた聴衆は、
あたふたと用意されたガスマスクをかぶった。

アメリカのブッシュ元大統領が、
イラクのフセイン大統領に突きつけた最後通牒、
クウエート撤退期限が、
あと10分という23日午後7時だったのだ。

タイミングがタイミングだけに、
スカッドミサイルに慣れっこになっていたエルサレム市民もさすがに慌てた。

ところが、そこに、
アイザック・スターンがガスマスクも着けずに、ひとりで舞台に現われ、
いきなりバッハのパルティータを演奏し始めたのだった。

空襲警報のサイレンも止み、
しーんとした劇場の隅々に、鮮やかなストラディバリウスの音色が響きわたる。
ニューヨークからわざわざ戦時下のイスラエルへ、
慰問にやってきたスターンに、
イスラエルの人々がこのときほど感謝したことはなかったであろう。

ヤッシャ・ハイフェッツ、アルトゥール・ルービンシュタイン・・・・・
ユダヤ人が誇りとする音楽家は枚挙にいとまがない。
世界中の超一流音楽家の90パーセント以上がユダヤ人である。

スターンはルービンシュタインとともに、
第二次大戦後、ナチスドイツへの告発姿勢を変えずに、
ドイツでは絶対に演奏しない数少ない演奏家のひとりでもあった。

有名なこの話を、日本のインターネットに残しておきたいと思い書きました。
検索してみたら、残念ながらどこにも載っていないようです。

ここでは国際政治のことはひとまず置いて、
アイザック・スターンの
エルサレム空襲警報下での演奏を顕彰したいと思います。

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by leilan | 2005-05-26 16:00 | Leilan's Bar
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