『書棚』  あたく史外伝 / 小沢昭一


あたく史 外伝

小沢 昭一 / 新潮社

スコア選択: ★★★★★





小沢昭一が雑誌「シンラ」や「新潮」に載せた、日常であったことや思い出、それをまとめた随筆集である。

中学校時代、たくさんの毛虫を取ってきて授業中に教室に放し、教師を慌てさせる。怒られても平気なもんだから、翌日の父兄会で小沢さんの母親が担任の先生にこっぴどく叱られる。最後に母親が「でも、オモシロイ子ではありませんか」。この一言に思わず喝采する。たいしたもんだ。この母にして、あの小沢昭一あり。

ある高校が小沢さんの一人芝居を買い切った。その公演が終わり、生徒たちが楽屋訪問する。一人のリーダーと覚しき生徒の質問にべらんめー調で答え、帰りに「僕、アヤノミヤ(礼宮)です。母がフアンです」と言われ、今更言葉遣いを変えるわけにもいかず、「そうかい、じゃ、オッカサンによろしくね」と言ってしまった話に腹の皮がよじれた。

山椒魚のオトウサンが川底に1mほどの横穴を掘り、メスと若いオスをそこに呼び寄せ、産卵をすますとメスも若いオスもその穴を出て行き、オトウサンはひたすらその穴で卵を守り、一人前に育つまで一ヶ月も二ヶ月も多勢の育児に専念する姿に触れ、未来のヒト科のオトウサンを思い浮かべる。井伏鱒二の名作「山椒魚」をもじり、そこで一句。

    山椒魚井伏鱒二の貌で棲む  小沢昭一

本の帯に「懐かしき昭和のこころ」と書かれている。もとより私は復古調の女であるが、この本を読むと昭和が恋しくてたまらない気持ちになる。

お互いを許容して生きていくことが出来た時代は、もう二度と来ないのであろうか。小沢さんの名人芸に笑った後、しんしんと増す淋しさが私を襲った。



b0048657_12391618.jpg  
小沢昭一が唄う 

 ♪靴が鳴る
               
 ♪お猿のかごや
               
 ♪夏は来ぬ
               
 ♪雨降りお月さん

    
小沢昭一の小沢昭一的こころ
[PR]
by leilan | 2005-05-13 11:31 | 書棚
<< 『俳句』  香水や恋の仇とすれ違ふ 『俳句』  マネキンの腕をはず... >>


バッカスの神さまに愛されたい
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧