このブログの更新通知を受け取る場合はここをクリック
Closely Observed Trains ボヘミアの地平線。 チェコは私にとっては魔術的で 中世的な魅力を秘めている国である。 なにより、中世の神聖ローマ帝国、 つまりドイツの中心に位置し、 ドイツ文化の多大な影響を受けつつ、 それは結局のところ最後までドイツではなかった。 この不思議な二重性が、 ボヘミアの地の謎めいた魔術性を決定づけている。 Bohumil Hrabal 著 『Closely Observed Trains』 このペーパーバックはとても面白かったが、 残念ながら、日本語訳は出ていない。 第二次大戦中、ドイツ占領下のボヘミアは、 おそらく、プラハの駅からどの方向に向かっても、 半日以内でドイツ人がいる土地に辿り着いたはずだ。 そのようなものとして、ボヘミアの人たちは、 ドイツ人に囲まれた地平線の中で暮らしていた。 彼らにとってドイツ人とはいったい何だったのだろう。 ひょっとするとチェコの人たちは、 その囲まれた土地を謎めいた魔術の言葉によって、 守っていたのではなかろうか。 物語の最初のほうに、 侵攻するドイツ戦車の前に立ちはだかった男の話が出てくる。 彼は催眠術の力で戦車隊を追い払おうとして、 ドイツ軍に「引き返せ」という念を送るのだが、 そのまま戦車に踏みつぶされてしまう。 ところが、彼を踏みつぶした先頭の戦車は、 その死骸の頭が挟まってしまい、 プラハの郊外の道で動けなくなってしまうのだ。 この挿話は、いかにもボヘミア的だと思った。 ボヘミアの魔術性と悲しみとしたたかさとは、 まさにこういうことなのだろう。
元大関・貴ノ花関 貴ノ花の病状がかなり悪化しているという。 がんばれ貴ノ花。 神様、どうか貴ノ花を助けてください。 現役時代、バネはあり、足腰も強く、才能に恵まれてはいたが、幕内最軽量を争うほどで、とにかく怪我や病気に泣かされた。細い身体で、150kgを超えるヘヴィー級を向こうに回し、誰が相手でも決して楽には勝てず、そしてどんなに相手が強くても簡単には負けない。そのハラハラ相撲が少女の私を揺さぶった。 貴ノ花が引退を表明した昭和56年初場所7日目。 この日の大相撲中継のことは忘れられない。 NHKのスポーツアナウンサーだった杉山邦博さんには、 貴ノ花に対する特別な思い入れがあった。 相撲アナウンサーとして駆け出したのと、 貴ノ花がデビューしたのがほぼ同時期だった。 常に世間の視線を集め、 逃げ場も隠れ場も心の安らぎもなかった貴ノ花。 同時代に輪島、北の湖という大横綱がいたことで、 その細い身体で精一杯の粘りの相撲を取りながら今一歩力が及ばず、 そのうち怪我や病気が体を蝕んでいった。 そして、衰えが次第に顕在化するようになる。 ついに、貴ノ花が引退を表明する。 その日、大相撲の実況が決まっていた杉山さんは、 貴ノ花の引退会見を見ながら悩んでいた。 はたして自分が平常心で実況に臨めるか。 まったく自信がなかった。 しかしプロとして恥ずかしい仕事はできない。 自分の相撲実況は貴ノ花とともにある。 そう思いながら長い間お茶の間に声を届けてきた。 そしてその彼はもう土俵から去る。 「貴ノ花は昨日限りで引退を表明しました」という 実況をしなければならない。 これを平常心で言えるのか。 杉山さんはそのように迷いつつ、 午後4時前、蔵前国技館のNHK放送ブースに、 解説の玉の海梅吉とともに座した。 一番一番進む取り組み。 あと何番、あと何番・・・。 杉山さんはどういう実況をしていたのか、よく覚えていない。 ただ、「貴ノ花引退」を自分の口で実況しなくてはならない。 その時間が迫ってくることが無性に怖かったという。 やがてその時は来てしまう。 場内アナウンスが以下のように告げた。 「大関貴ノ花、引退のため本日より休場、 したがって蔵王錦の不戦勝であります」 ところが杉山さんは、 喉の奥が詰まって声が出ない。 実況アナとして、 何かしゃべらなくてはならない。 彼は絞り出すようにしゃべりはじめた。 「昨日の一番を最後に・・・、大関貴ノ花は・・・、 土俵を去ることになりました。 あまりにも偉大な兄の下で大きな苦しみもあったことでしょう。 そして怪我も多く、 一向に太れないあの小さな身体で、 よくぞここまで土俵を勤め上げたと思います・・・」 そこまで言って一呼吸つくと、 杉山さんの胸にはアナウンサーになってから 初めて味わう感覚がこみ上げてきた。これは・・・。 私はひょっとしてこれから涙するのか・・・? そう思いながら杉山さんはさらに続ける。 「あの小さな身体で・・・・・・、本当に長い間お疲れさまでした・・・・・・」 杉山さんは頬を大粒の涙で濡らし、 ・・・・・そこで絶句してしまった。 涙で実況すべき土俵を見ることすらできない。 隣でその一部始終を見ていた解説の玉の海さんは、 杉山さんにやさしく一瞥した。 玉の海さんは十数年前の貴ノ花初土俵からの思い出を、 次の取り組みがはじまるまでゆっくりと、 しかし、非常にしっかりとした口調で、 視聴者に語り掛けていたのだった。 いろいろなスポーツの実況中継を見てきたが、 これほど心打たれた実況をいまだ知らない。 ...................................................................................................................... 大鵬が引退を決めたといわれる貴ノ花との一番がここで見られます。 I'm very fond of you !
『俳句』 集まって来てフラフープ四.. ...
『秀句鑑賞』 冬ざれのくちびるを...
エロチズムを追い続けたパリ野郎 / .. ...
『俳句』 背ナの子の瞳に合歓の花ひらく ...