統合スタイルと調和スタイル

言語学研究室日誌の wnm さんのエントリを拝読。

福岡正行氏が郵政民営化反対論の一つに、
「日本人は聖徳太子以来、和を以て貴しとする民族である」
これを理由に挙げておられることを知った。

日本人というのは、ほんとうに日本人論が好きな民族だと思う。
アメリカとかフランス、ドイツあたりへ行っても、
日本人ほど自民族論をやっているところはない。
だから、日本人は何かと言うとすぐ、
「日本人は」という話をしたがると言って冷やかされることが多い。

まあ、それは当たり前のことなのかもしれない。
たとえば、サミット。
あそこに集まる人たちは、日本人以外はみんなキリスト教徒である。
だから、彼らは共通のベースをもっているが、
それとは違うのが一人いるわけだ。
先進国のほかのみんなとはどこかで違いながら、
違わないということで入っているのだから、
どうしたって日本人ということを考えざるを得ない。

パラダイム(理論的枠組み)という観点から考えれば、
日本人のパラダイムは神話の構造から来ているのだろう。

「古事記」の神話を例にとれば、
アマテラスオオミカミ(太陽の女神)
ツクヨノミコト(月の神)
スサノオノミコト、
この三柱の神が、三貴人といってもっとも貴い神とされている。

アマテラスとスサノオの間にはいろいろな葛藤があって、
スサノオがやたら暴れまわり、狼藉を繰り返すので、
アマテラスは怒って天の岩戸に隠れてしまうというような話がある。

ただ、不思議なことに、
「古事記」にはツクヨミの話がまったく出て来ない。
三柱の神がもっとも大事だというのに、
真ん中にいる神がなにもしていない。

海幸彦と山幸彦も、
実は真ん中にホスセリというもう一人の神がいるのに、
やはり真ん中の神はなにもしていない。

どうも日本神話というのは真ん中が空っぽの中空構造になっている。
それで神々がうまくいっているのは全体が調和しているからだろう。

たとえば、最終的に日本の国はアマテラスの子孫が治めることになるが、
スサノオの子孫のオオク二ヌシが「私を神として祭ってほしい」と言えば、
そのとおりに出雲大社がつくられたりするのだ。

それに対し、キリスト教の場合は、
中心に唯一絶対の神が存在する。
神は一つで、これは敢然たるパワーとプリンシプルをもっている。
だから、調和ではなくてインテグレート(統合)しているわけだ。
これが西洋文化の特徴である。

欧米の会社組織は、株主がいて、社長がいて、従業員がいる、
この形が縦にきれいに並ぶのに比して、
日本の場合は、株主と社長と従業員とがみんなでぐるっと輪になっている。

社長が「従業員がやかましいんでねえ」とか「うちは株主がうるさいから」とか、
株主は株主で「いや、社員がうるさい」とか言って、
みんなのせいにして、誰がトップにいるのか判らない。
で、失敗したときは一億総懺悔とかなんとかやるようなシステム。
上手に逃げる人は逃げられるという構造になっている。
だから、日本では責任の所在をつきとめることが非常に難しい。

ただ、まったく責任をとらないというのも困るので、
たまたまそのときに長のポストにいた人物が責任を取って、
マスコミの前で土下座したりする。

日本の難しいところは、欧米社会とのつき合いから、
うわべだけはインテグレートの形をとっていたりする点である。

「どうもわれわれの課長はリードしない。長たるものは方針を示すべきだ」
みたいなことを酒場で喋って、みんなで盛り上がっていたりするのに、
実際に課長が方針を示してリーダーシップを発揮しはじめると、
「あんな身勝手なこと言って、納得できない」
などと反旗を翻したりする。

こういうことは日本中のいたるところで起こっているが、
アメリカの組織ではこうした光景を、まず見たことがない。

パワーとかプリンシプルをもってみんなをリードするのがリーダーの役割だが、
日本人はリードするよりも、いかに調整してくれるかを期待している人が多い。

今まではそれで十分やって来れたわけだが、
グローバリゼーションが進み、地球が狭くなるにしたがい、
貿易摩擦にしろ、外交での摩擦にしろ、
外国とのあいだにいろいろな摩擦が起こってくると、
インテグレートの組織にいる人々とも交わらなければならない。

その中で、優位を確保していくためには、
聡明で大胆なリーダーシップが要求される。
日本にもっとも欠けているのはほかならぬその種のリーダーシップであるが、
それが発揮されはじめると、
「小泉翼賛政治」などというキャプションが出てくるのは、
こうした日本の土着性だろう。
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by leilan | 2005-08-17 06:10 | とらば&とらば
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