『俳句』  胸もとにみづうみ匂ふ居待月

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            胸もとにみづうみ匂ふ居待月  麗蘭





昨日、ガソリンスタンドにいたら、
テレビ局がやって来て、
ガソリン高騰について感想を訊こうとしたので、
是非ひとこと言ってやりたかったけれど、
あいにくスッピンにサングラスで、
髪も色気なくゴムで縛っただけ、
着ていた服も何度も水をくぐらしたTシャツだったので、
ひっこんでいた。

すると、
お化粧もバッチリと、
鮮やかなトルコブルーのムームーを着た
なかなか綺麗なおばさんが悠然と、
「わたくしどもにとって、これは死活問題です!」
と、簡にして要を得た返事をしたので、
これに尽きると、満足して帰ってきた。

日本にいた頃、
国会図書館をよく利用したが、あそこは怖い。

先ず、朝、入り口の外のベンチで入る順番を待っている。
すると並び方が間違っている、と注意される。

次には貸出窓口で、
貸出申請用紙への書き方が間違っている、と注意される。
その声が口の中でブツブツと聞き取りにくいので、
訊き直すと、実に面倒臭そうなイヤな顔になる。
そしてちょっとだけしか教えてくれない。

次、貸出本の受渡しのさいには姓名を呼ばれたら、
ハイと返事してすぐさま受け取りに出て行かなくてはならないが、
のどに痰が絡まって声が出てこない。
すると、大きな声で判るように返事してください、と注意される。

姓名を呼び出す貸出係の声は、
わざとそうしているとしか思えないぐらいのくぐもり声なので、
みんなは耳にかぶさる髪の毛をかきわけ、
ひたすら耳を澄ませて自分の姓名が呼ばれるのを聞き取ろうと、
待合室の椅子に着席、
便所に行きたいのもこらえて待つ。

あるとき、70代くらいの痩せて背の高い老人が、
はじめて来たらしく、
ああでもない、こうでもない、
こっちではない、あっちいって、と何度もやり直しさせられて、
カンシャクが起きたのだろう。
身体を震わせ、口角に泡をためて叫んだ。

「もう我慢が出来ない。
若いみなさんがどうしていいなりになってるんだ。
いいですか。
こういう権力をカサにきた傲慢無礼な態度を許しておいちゃいけないんだ。
こないだの戦争はそれで起きたんだ」

みんな眼を合わせないように、
うつ向いて本を読んだり、筆箱をいじったりしていた。

(そうだ。やたらと威張るな。口をあけて、はっきりものを言え。ものを教えろ)

こう口の中で練習したのち、
私は老人に応えて立ち上がり、練習した通り言いたかったのだけれど、
すっぴんに口紅もささずに出かけてきている自分に気が付くと弱気になり、
うつむいてしまった。

口紅をさすと元気が出るのだ。
ここ一番、交渉ごとに出かけていくときは勿論、
警察に出かけていくときも、税務署に出かけていくときも、
口紅さしてからだ。

そんな癖がついたのは、
社会人になって勢いつけなきゃならん仕事をしていたからで、
「口紅が濃すぎますよ」
と母に注意されても、
毎日、真紅に塗りたくって、機嫌よかった。
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by leilan | 2005-09-23 00:01 | 俳句
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