『俳句』  そのあとのゴールデン街冬銀河
    
    ーー昔、新宿ゴールデン街にマレンコフという名の流しがいたーー
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            そのあとのゴールデン街冬銀河  麗蘭






新宿ゴールデン街はいまもあるけれど、
昔のひかり、今いずことなってしまった。

柳街は更地のまま、
三番街も更地になっている。

その三番街の端っこに、
なんだかあやしげな通りがある。
そしてその通りの路上に10軒ばかり、
1坪ほどの店がたこつぼのように並んでいる。

ゼンリンの住宅地図なんかみても、
どこにも載っていないし、電話もない。
4名入るといっぱいだ。

それが『ミッチャンの店』だった。

店の開くのが、午前12時半位。
1時でもまだやっていないことがあった。



三十代の頃、
飯田橋にあったオフィスで夜業にいそしんでると、
決まって10時頃、電話が鳴った。

「のろまねぇ。いったい何時まで働いてんのよー」

コピーライターのウッチャンからだ。
かつて全共闘の女闘士だったというウッチャンは、
年商3億のほとんどをひとりで稼いでいるやり手しゃちょうだった。

神楽坂に御輿を据えていればいいものを、
つい興に乗ると、ゴールデン街に足が向いてしまう女二人。

飲んで騒いで、2時過ぎ、
街娼のおねえさんやオカマさんのなかをぬけて、
ミッチャンのところへやって来る。

でもミッチャンの店、
灯りはついていても、本人がいないことが多い。

それで、やにはに、
「ミッチャーン」
って大声で何度か叫ぶと、
いったいどういう連絡網になっているのか、
大柄で厚化粧のミッチャンが走って来るのだ。

「ちょっとォ、もう大声出さないでよ、みんな迷惑なんだからぁ~
でも、しばらくね」

なんていいながら、店を開けてくれるのだ。

さて、それからまた飲むのだが、
またそこでいろいろなことがおこるのだ。

ここらへんに飲みに来る人は、
オカマ、街娼、バー帰りのママ、
流しのマレンコフが仕事終って一杯、とかが多い。
一般の部では、職人、マスコミ人が多いかな。
芸能人、スポーツ選手もいた。

当然争いごとがおきたり、
私は小唄なんかうなって、にぎやかなことだった。

たまには、ミッチャンと別の店にいったりして、
そこでも騒いでいた。
とにかく、面白く不思議な一帯だった。

このミッチャンのお店の上に、
鈴木清順がオーナーだった「かくれんぼ」という店があった。
そこのママで女優だった律子さんという人が、
ここで何年も働いてながら、
とうとうこのミッチャンの店の存在を知らなかったらしい。

それでも朝7時くらいになるとさすがに、
「れいちゃん、お母さまが心配してるわよ」
なんてことで追い出される。

この7時くらいに、
となりにいたオカマのおねえさんが胸の詰め物を外しながら、
「さて男に戻って働くか」
なんて男顔になったりするのだ。

ミッチャンが美人なのかどうなのか、
私にはさだかでない。
素面でいったことがないし、
なんせ厚化粧なのだ。

だいいち何故ミッチャンっていうのかな。
本名は別にあるし・・・
ひょっとして、私が「ミッチャン」っていいはじめちゃったのかな。

でも、うちの母に旅先から干物を送ってくれたりする、
やさしいおねえさんでもあった。

現在はこのお店はない。

帰国する度、他の店でミッチャンと会って飲んでいたものだったが、
その店もまた閉店してしまった。
ミッチャンからは、今も時々電話がかかってくる。

相棒のウッチャンは、
当時からニューヨークにアパートを持っていたが、
その後、ミュージシャンと結婚して、
今はマンハッタンで暮らしている。

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by leilan | 2005-11-13 17:28 | 俳句
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