『秀句鑑賞』
 
 ゆるやかに海がとまりぬ暖房車  加藤楸邨


暖房は冬の季語、
といってもあまり情緒が感じられないが、
むかしは寒い戸外から暖房の効いた室内に入ると
夢のようにあたたかいと感じたものだったろう。

掲句の暖房車は、きっとローカル列車。
旧式の列車で、地元の人がぱらぱらと乗っている。

海沿いにしばらく走っていたが、駅が近づいて停まった、
そのようすを海がとまった、と表現した。

この列車の中で、旅人は作者ひとりだけだったのかもしれない。
ゆるやかに、という表現が作者の心情をも言い留めている。

過ぎゆくいまという瞬間を、
切り取ってピンで留めたような鮮やかさ。

わたしたちは、ひととき楸邨とともに、
同じ列車に乗り合わせたような錯覚に陥る。

加藤楸邨、さすがのものである。

(暖房・冬)
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by leilan | 2005-12-08 00:02 | 秀句鑑賞
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