『秀句鑑賞』

  へろへろとワンタンすするクリスマス  秋元不死男


日本のクリスマスは、すでに明治後期から大正期にかけて普及していた。
キリストのことにつまびらかではないという思いを、誰しもが抱きつつも、
宗教ではなく民間風俗として、日本社会に深く根付いた。

人々が浮かれている夜に、
「へろへろ」とワンタンをすする不死男の眼には、
どう見てもクリスマスは富者の繁栄としか映らなかった。

社会の貧困や矛盾を見つめ、その諸相をリアリズムの眼で、
俳句に昇華させることが不死男の願いであった。

しかし、そうした願望への努力が、思わぬ不幸をもたらした。

昭和15年の京大俳句事件にはじまる特高警察の新興俳句弾圧である。

京都で西東三鬼が検挙され、
翌16年2月に横浜で逮捕された不死男は、
治安維持法違反で起訴され、
18年2月まで東京拘置所の独房に入った。

掲句は、昭和23年頃の作。

七面鳥などの華やかなクリスマス料理を尻目に、
不死男はワンタンを食したが、
これには一理ある。

中国の庶民は冬至にワンタンを食べる。
それがクリスマスの時期とほぼ一致する。

つまり、不死男のワンタンは、
貧しい庶民の東洋風儀礼食の象徴だったのである。

(クリスマス・冬)
[PR]
by leilan | 2005-12-11 10:15 | 秀句鑑賞
<< 『俳句』  ポインセチア夜のあ... 『俳句』  雪晴れを来てまっす... >>


バッカスの神さまに愛されたい
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧