『秀句鑑賞』

 雪女郎おそろし父の恋恐ろし  中村草田男  


雪女郎は雪国の妖怪。
雪女、雪鬼などとも言うが、要するに雪の精霊だろう。
優しい面と怖い面の両面をもつが、それは雪というものの二面性だ。

草田男の句は、雪女郎の人を魅了する怖さを父の恋に重ねている。

雪女郎のような女に恋した父は、家族などを捨てて破滅へ深入りする。
それで、「おそろし」「恐ろし」と表現した。

仮名の「おそろし」には雪女郎の美などが、
漢字の「恐ろし」には破滅する父の定めが感じられる。

草田男という俳人はとても大胆だ。
掲句にしても、「おそろし」を2度も使う点が大胆。

それに、「おそろし」のような形容詞は俳句では禁句に属する。
作者の言い過ぎになって失敗しがちだから。
ところが、草田男は「おそろし」を繰り返す。なんとも大胆である。

数年前、父とふたりで飲んだとき、

「お父さん、もし、よそに子供がいたら、知らせておいてくださいね。
もしものことがあったとき、お父さんも逢いたいでしょ」

と訊ねたら、

「いや、子供はおまえたちだけだ」

ときっぱり言っていたが、
かつて、雪女郎はいたであろうと思う。

(雪女郎・冬)
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by leilan | 2006-01-25 19:35 | 秀句鑑賞
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