『秀句鑑賞』

 寒星や出した手紙はまだポスト  内田美紗


夜のポストに手紙を投函し、その夜、
星を見上げて手紙を出した相手を思っている。
その相手への手紙はまだポストの中。

中学生のとき、
同級生の尚子ちゃんから電話がかかってきた。

恋文をポストに投函したものの、
文中に気になる箇所があって取り戻したい、
なんとかならないだろうか、と言うのだ。

え?
ポストから取り返したいの?

尚子ちゃんは翌朝ポストの前で集配を待った。

私は、担任の先生に嘘つく係り。
尚子さんは歯医者に寄ってから登校するそうです、なんて。

集配担当のおじさんがやってくる。
必死にお願いする尚子ちゃん。

いったん投函したものは返せないんだよね、
と、けんもほろろの郵便局おじさん。

ところが、このおじさんが融通無碍な御仁であった。

尚子ちゃんが差し出した生徒手帳をチェック。
恋文を探してくれたという。

彼女の恋は実らなかったが、
その相手は、いまや押しも押されぬ歌舞伎の花形役者になった。

(寒星・冬)
[PR]
by leilan | 2006-01-26 14:14 | 秀句鑑賞
<< 『俳句』  はらぺこスパゲッティ 『俳句』  忘れ得ぬ人 >>


バッカスの神さまに愛されたい
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧