2006年 01月 25日 ( 2 )

『俳句』  忘れ得ぬ人

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    花嫁の荷に紅梅を一枝挿す


    降る雪やいま灯りたるバーの窓


    着ぶくれてわたしなんだかイースト菌


    美術館がらんどうわれ独り咳(しはぶ)く


    冬薔薇や煉瓦はすでに過去の色


    寒北斗夜々に傾き夜々に想ふ


    はちみつの秘密を舐める春隣


    本名に税ふりかかる牡丹雪


    北風や人恋ひ牛の長鳴ける


    拘置所のたった一つの冬日窓




■花嫁の荷に紅梅を一枝挿す

この光景は今でもよく憶えている。
叔母悦子が嫁いだのは昭和39年。
当時としては遅い結婚だった。

悦子叔母は小児麻痺の後遺症で足を引き摺る。
なかなか貰い手がなかったんだと思う。

その叔母がようやく嫁ぐことになった。

トラックの荷台にタンスや鏡台がつまれたき、
うちに昔からいたばあやが、
庭の紅梅を一枝、荷の紐にそっと挿したのだった。

梅の季節になると、
ばあやのことを思い出す。

ばあやが亡くなったとき、
父は喪主の挨拶で、
「観音さまのような人でした」
と語っていた。

確かに、ばあやが怒ったり、
きりきりしている姿を見たことがなかった。

縁の薄い人で、
夫も子供も早くに失い、
決して幸せな境涯ではなかったが、
慈母観音のような人であったと思う。
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by leilan | 2006-01-25 19:54 | 俳句

『秀句鑑賞』

 雪女郎おそろし父の恋恐ろし  中村草田男  


雪女郎は雪国の妖怪。
雪女、雪鬼などとも言うが、要するに雪の精霊だろう。
優しい面と怖い面の両面をもつが、それは雪というものの二面性だ。

草田男の句は、雪女郎の人を魅了する怖さを父の恋に重ねている。

雪女郎のような女に恋した父は、家族などを捨てて破滅へ深入りする。
それで、「おそろし」「恐ろし」と表現した。

仮名の「おそろし」には雪女郎の美などが、
漢字の「恐ろし」には破滅する父の定めが感じられる。

草田男という俳人はとても大胆だ。
掲句にしても、「おそろし」を2度も使う点が大胆。

それに、「おそろし」のような形容詞は俳句では禁句に属する。
作者の言い過ぎになって失敗しがちだから。
ところが、草田男は「おそろし」を繰り返す。なんとも大胆である。

数年前、父とふたりで飲んだとき、

「お父さん、もし、よそに子供がいたら、知らせておいてくださいね。
もしものことがあったとき、お父さんも逢いたいでしょ」

と訊ねたら、

「いや、子供はおまえたちだけだ」

ときっぱり言っていたが、
かつて、雪女郎はいたであろうと思う。

(雪女郎・冬)
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by leilan | 2006-01-25 19:35 | 秀句鑑賞


バッカスの神さまに愛されたい