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『俳句』  ワイキキにも野麦峠がある

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    病むわれを探しにきたり寒雀


    純喫茶スワンに毛糸編んでをり


    はろばろと明治の人を寒見舞


    朝の雪舫ひの舟のしづもれる


    水仙の匂ふ未明を愛されし


    冬星やグリコ一粒三光年


    床に我われに猫坐す霜夜かな


    二つ目はきらはれてゐるくさめかな


    粕汁に目玉落してゐたりけり


    夜の壁にライエルマンは還らざる    シューベルト『冬の旅』より




どうにもこうにも頭がパーです。

俳句が向こうからやって来ない。
もんどりうってどうにか十句。

ワイキキにも野麦峠がある。


        
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by leilan | 2006-01-11 20:31 | 俳句

『秀句鑑賞』

 本買へば表紙が匂ふ雪の暮  大野林火


本好きの人に解説はいらないだろう。
以前から欲しいと思っていた本を、
ようやく買うことができた嬉しさは格別だ。

「表紙」をさするようにして店を出ると、
外は小雪のちらつく夕暮れである。

いま買ったばかりの本の表紙から、
新しいインクの香りがほのかにたちのぼって、
また嬉しさが込み上げてくる。

ちらつく雪に、ひそやかに良い香りが滲んでいくような幸福感。
この抒情は、若者のものだ。

林火、若き日の一句。

(雪・冬)
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by leilan | 2006-01-10 10:52 | 秀句鑑賞

『俳句』  Stay Foolish!  

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    大子規の頭の前に悴(かじか)めり


    燗酒や舌ゆきたがる抜歯痕


    月島発もんじゃ風味のコートかな


    石段に冬日ぱいなつぷるちよこれいと


    貧乏ゆすり隔世遺伝する湯ざめ


    むかうから父が来さうな冬木立


    雪だるま迎ふる佐々木理髪店


    なべ焼の横に乱歩の丸眼鏡


    山茶花の陰からぬっと雨男


    腹立ちのほどけてきたる根深汁



■俳句について


俳句は世の片隅に密かに、慎ましく生き続けるもの(飯田龍太)

手垢のついた言葉は使わない(後藤綾子)

俳句は子供にも作れて易しいが、大人にも作れて難しい(曽我弧泉)

作句は言葉の引算、鑑賞は言葉の足算(曽我弧泉)

人間に対する思いを失っては、見事な俳句は生まれない(飯田龍太)

俳句は命をいとおしむもの(飯田龍太)

一度きりの人生を、一行きりの俳句に賭ける(曽我弧泉)

俳句は平凡な風景を、あらためて感じるところに、特色がある(飯田龍太)

名人はあやふき所に遊ぶ(芭蕉)

余韻は生命(虚子)

俳句は殊に情のねばりを嫌うべし(乙字)

すべて滑稽はあわれであり、さびでありしおりでなければならない(寺田寅彦)

俳句は省略、こね回してはいかん。平明で一個所決まっておればよい(阿波野青畝)

因と過程は詠むな(藤田湘子)

「さびしさや」と感じたところは「しづけさや」と表現する(上田五千石)

この世を憂き世ではなく、浮き世として詠んで行きたい(森澄雄)

人生五十年も八十年も、同じように一瞬である。
要は取り返すことの出来ないこの時間を生きているということである。
今を大事にし、今に永遠を掴み、無限を詠むことである(森澄雄)

作句は、われが、唯今、眼前にしたものを詠め(上田五千石)

俳句は意味ではない(奥坂まや)

深く見てさらりと表現したい(倉田紘文)

実に即して虚を求める(林田紀音夫)

季語に語らせる(老川敏彦)

俳句の本質はリズム、沈黙の表現、外におさえて内の虚空にひびかせる。(平井照敏)

俳句は謙虚の詩(後藤比奈夫)     

削るのは良いが、付け加えるな(後藤夜半)

何もしていない時がいちばん充実している。
何かをしている時間より何もしていない時間が大切なんだ。
そのなんでもない時間が俳句を生む(森澄雄)    

いい句は狙った的のもう一つ奥に思いがけなく命中している句だ(高柳重信)    

他人の句を味わわないで、どうして自分のいい句が出来るか(森澄雄)

俳句は瞬間の永遠化(鷹羽狩行)

自分自身の身を軽やかにしろ(藤田湘子)

遥かなものへ繋がるために、俳句を詠む(正木ゆう子)

芸に遊ぶは至境なり(孔子)



【追記】

玄耕庵日乗の素楽さんが、
すごーい自販機の写真をアップしてくださいました。
ここをクリック。

素楽さん、ありがとうございました。
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by leilan | 2006-01-10 10:51 | 俳句

『秀句鑑賞』

 姫始闇美しといひにけり  矢島渚男


「誰がいったのか?」

と思わず突っ込みたくなるが、
ほのかなエロティシズムが漂ってくる秀句である。

「姫始(ひめはじめ)」は一般的には、
新年最初の男女の交わりを指す季語と受け取られている。
だからだろう、ほとんどの歳時記には載せられていない。
どうも歳時記はストレートなセクシーを嫌う。

「姫」という以上は、もちろん男からの発想で、
女の側から詠めば「殿始」かと言えばそうではない。
女が閨を語るのは、はしたいないという発想なのだろう。

歳時記の季語解説を読んでみると、

正月二日。由来は諸説があるが、
一説に『飛馬始』の意で、乗馬始の日とする。
別説では火や水を使い始める『火水始』であるとする。
また男女交合の始めとする説もある。

妥当な説としては、『■■始』
(註・「■■」の文字はJISコード外なので、
パソコンに表記されない。「米」に「扁」と「米」に「索」で「ひめ」と読む)
つまり釜で炊いた柔らかい飯である姫飯(ひめいい)を
食べ始める日とする説が挙げられる。
強飯(こわめし)を食する祭りの期間が終わって、
日常の食事に復するのが姫飯始、
略して『姫始』となったと考えられる。

と歳時記は解説するが、
「姫飯始」より、男女の「姫始」の方が俳句には作りやすい。

ところが、「姫始」の句を作る女流俳人はめったにいないのだ。
男の季語として男にばかり詠ませるにはもったいない。
いい季語なのに。

それとも淋しい暮らしなのか?!

(姫始・新年)
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by leilan | 2006-01-07 08:15 | 秀句鑑賞

『俳句』  新春十句  ・・・うぶなあの日に帰れない

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    親不孝してきて恋し七日粥


    初夢のやさしき母語に目覚めけり


    ゆふぐれや誰ぞ忘れし独楽一つ


    人妻を見つむ獅子舞口あけて


    御降りの真っ只中を水買ひに


    パンのみに生くるにあらず福寿草


    歯固めの山田五十鈴と森光子


    初声や人の話を聞いてない


    小走りの母に負はれし破魔矢の子


    人日の茶柱すこしメランコリー




啄木の「ローマ字日記」を読了。
実にさわやかでない内容。

勤め先の朝日新聞で給料を前借して、
翌日から二週間も休んでしまったら、
そりゃ、信用もなくなるだろうよ。

私が3億円の宝くじに当って、
しかもタイムマシンを発明したら、
まず、明治時代に行って、
樋口一葉と石川節子にお金をあげて
生活を立て直させてやりたい、と、いつも思っている。

もちろん、啄木には直接、お金を渡さない。

                          
        
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by leilan | 2006-01-07 08:10 | 俳句

『秀句鑑賞』

 なんでこれしきのテレビと初泣きす  石川桂郎


お正月の季語には「初・・・」がたくさん登場する。

正月は何をするにも気持ちが新たになって爽やかだ。
でも、「初」のことだけに、納得のいかないことも多々ある。

初電話がガチャンと切れる間違い電話だったり、
初日記に訃報を記さなければならなかったり。

石川桂郎の初泣きはテレビ番組だった。
ぼんやり見ていたテレビ。
一大感動巨篇というわけでもないのに、
思わず泣いてしまう。

泣きながらも、
「ああ、なんでこれしきのことで初泣きしてるんだか・・・」
と納得いかない様子。

諧謔の一句。

(初泣き・新年)
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by leilan | 2006-01-06 18:47 | 秀句鑑賞

『俳句』  新春十句 どこまで続くぬかるみぞ・・・

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    繭玉の垂れてかすめる眉間かな


    初弥撒やパーマン2号飛んでゆく


    移民二世いま百歳の手鞠唄


    初風呂やヘアピン置かれ洗面台


    素っぴんでトーストかじる三日かな


    乳房吸ふいとほしき背に初明り


    初暦まるまる睫毛パーマかな


    弾初やうなじ並んで連弾す


    買初のレシート裏に一句かな


    初夢の男ささやく嘘始め


    



いまラジオから、
ビートルズの「抱きしめたい」が流れている。

この曲を聴くと思い出すのはなぜか、
東京オリンピック、そして叔父のことだ。

父のいちばん下の弟は、私と12歳しか違わない。
だから、もの心ついたとき叔父はまだ中学生だった。

家族は皆、叔父のことを「よっちゃん」と呼んでいたが、
私だけはよっちゃんを「先輩」と呼んでいた。
よっちゃんが「そう呼べ」と言うのだ。
叔父というより、年の離れた兄という感じだった。

先輩の中学はAZABUだから、そこそこは優秀だったのだろうが、
学校でタバコを吸っていたのが見つかって、
父兄が呼び出しをくらうことになった。

ところが、先輩の母親である私の祖母は明治一代女だ。
さすがの先輩も祖母に言うのはビビったのだろう。
義理の姉である私の母に、そっと打ち明けたそうだ。

母が赤ん坊の私をおぶって学校に出向くと、
担任の先生は紙袋の中から一冊の本を取り出し、
「実は、授業中にこんなものを読んでいましてね」
と、苦笑いされたそうだ。

そこには当時のベストセラー、
謝国権の「性生活の知恵」があったという(笑)

先輩は洋楽の類が好きだった。
ビートルズもローリング・ストーンズも先輩がよく聴いていた。

当時、ビートルズのシングル盤はキャピトルレコードの赤い盤のやつで、
レーベルは紺に金文字で書かれていた。

「抱きしめたい」が流行ったのは、東京オリンピックの頃。
I wanna hold your hand のリフレインを、
「あわのほうゆうへい」と聴き覚えていて、
先輩にねだるときは、
「あわのほうゆうへい、かけて~」と言っていた。
まだ小学校2年生だった。

今も、この「抱きしめたい」を聴くと、
「あわのほうゆうへいええええ~」
と脳裏に平仮名が浮かび、
その彼方を、エチオピアのアベベが裸足で駆けてゆく。


    
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by leilan | 2006-01-05 20:03 | 俳句

『秀句鑑賞』

 オリオンの盾新しき年に入る  橋本多佳子

 
オリオン座は代表的な冬の星座。
今の時期、夜、空高く光っているのですぐに見つけることができる。

しかし、掲句の季語は「新しき年」。つまり、新年である。

俳句を作ろうとする人が最初に面食らうのが、「新年」の季語の存在。
春・夏・秋・冬に加え、この時期だけに使う季語があり、
歳時記も5つ(春・夏・秋・冬・新年)の項目に分かれている。

だからといって季節が5つあるというわけではなく、
お正月がいかに日本人にとって大切な行事だったか、ということだ。

橋本多佳子は、新しい年になって、
オリオン座の盾も新しくなったかのようだ、という。
実際にはありえないことでも、こういう言い切りは俳句らしい。
俳句は断定の文学だといわれるゆえんでもある。

(新しき年・新年)
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by leilan | 2006-01-02 19:52 | 秀句鑑賞

『俳句』  新春十句

あけましておめでとうございます。
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    去年今年爆竹走るオアフ島        (去年今年=こぞことし)


    若水の珈琲うまし未明かな


    初日の出ひとりは海へ走り出す


    あらたまの少女の唇の真一文字


    やはらかき春着を濡らす日照雨かな   (日照雨=そばえ)


    初鏡白髪すきまに納まらぬ


    凧はるか小さくなって重くなる


    一椀の雑煮ちちはは想はざる


    姫はじめいろはにほへと未然形


    ワイキキの片隅にゐて寝正月



本年もよろしくお願い申し上げます。


    
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by leilan | 2006-01-02 19:37 | 俳句

『秀句鑑賞』

 初湯中黛ジユンの歌謡曲  京極杞陽

昭和44年の作。
銭湯の初湯は江戸期から二日と決まっているが、
これは元日の家庭での朝風呂だろう。

機嫌よく口をついて出てきたのは、黛ジュンの歌謡曲だった。
なぜ、歌謡曲なのか。
もちろん、昨夜見たばかりの「紅白歌合戦」の余韻からである。

曲目は「雲にのりたい」あたりだろう。

作者の京極杞陽(本名・高光)は、
明治41年、京極子爵家の長男として生まれた。
但馬・豊岡藩主十四代当主。つまり、世が世であればお殿様である。

昭和19年、教育招集に応召したときの句。

春風や但馬守は二等兵

これまた、人を食った句である。
しかも、入隊、即日除隊。なにしろ子爵京極家十四代当主である。
格好だけの入隊であったのか。
戦後、宮内省を退庁、貴族院議員に選出。

しかし、お気楽な殿様人生かと言えば、かならずしもそうとも言えない。

十五のときに関東大震災で家屋敷を焼失、両親と兄弟を一度に失った。

しかし、血はあらそえないと言おうか、
その俳句は、おっとりして、飄々、洒脱。

ホトトギス一派の懐の深さを感じさせる。

(初湯・新年)
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by leilan | 2006-01-01 06:40 | 秀句鑑賞


バッカスの神さまに愛されたい
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