『秀句鑑賞』

 ストーブにビール天国疑はず  石塚友二


楽しさを開けっぴろげにした句。
「ビール天国」ではなくて、「ビール」と「天国」は切れている。

句意の説明はいらないだろう。
ことに、ビール好きの面々なら、思わずニヤリだ。
入浴の際に「ああ、ゴクラク、ゴクラク」と言うが如し。

天国ってのは、きっとこんな楽しいところなんだろう。
酒はうまいしネエチャンは綺麗だと、歌にもうたわれている。
無邪気に納得している作者のはしゃぎぶりがよく伝わってきて、
ビール好きの私には嬉しい句だ。

ただ、こういう句の評価は低いでしょうね。
「ひねり」がない。
屈託がない。
ついでに言えば、馬鹿みたいと。

どうも俳壇ではこうした明るい表現に点が辛い。
喜怒哀楽の「怒哀」ばかりが肥大して、
人間の捉え方が異常なほどにちぢこまってしまっている。

もっともっと野放図に放胆に明るい句はたくさん作られるべきで、
その積み重ねから「喜楽」に対する表現技術も磨かれてくる。

(ストーブ・冬)
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# by leilan | 2006-01-18 17:34 | 秀句鑑賞

『俳句』  「法律に抵触しなければ何をしても良い」という抜け穴哲学

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    いくたびも目が覚む屋根の厚雪に


    一月やオランダ切手濡れ届く


    気懸りなこと日向ぼこしてゐても


    考える顔してパック小正月


    歯ぞ眩しラグビー場は泥たぎり


    母やさし笹鳴くれば出でてゆく


    飛行機の士の字突入凍て雲に


    見下ろせばワイキキの海日脚伸ぶ


    縫初の針穴嫌ふイワンの馬鹿


    生きのびて何なしたるや震災忌




■ライブドア

東京地検特捜部が専従班の内偵捜査を本格化させたのは昨年秋だという。
ライブドアのビジネス手法が検察の社会倫理から許せないということか。

社会を間違った方向に向かわせるとの思いがあったのだろうな。

捜査は11時間近く行われたそうだ。
その間に「幹部間の電子メールの一部や財務関係の資料」も入手した模様。
新聞に載っている捜査理由は「風説の流布」「偽計取引」。

それらは報道されている通りとして、
元幹部が明らかにしているライブドアのやり口というのはかなりあくどい。
これでは恨みをかっても仕方がないと理解できる。

 1)ライブドアは結果的に買収することになった企業に対して、
   現金の引き渡しではなく株式交換での買収契約を締結させる。
   「株価上昇が期待でき、現金よりも有利」と言う理屈。

 2)しかし実際に買収が成功すると、被買収会社の元株主には、
   「株価下落のリスクが負えない」と言って突如現金決済が通告され、
   数億円が支払われる

 3)ライブドアはその後、手元に残った株なども対象に株式分割を行い、
   その結果株価が急騰したら、投資組合を通じてそれを売却。
   それによって儲けるという仕組み。

元幹部は、信用して買収を受けることを決めたのに、
最初から新株売却が目的だったのかと、だまされたような思い。
不正な取引であることは明らかだ、と述べている。

特捜部はこうした発言を含めて、
押収した幹部間のメールや電子書類を背景に捜査を進めると思われる。

特捜は何を考えているのか。

恐らくそれは、
「法律に抵触しなければ何をしても良い」
というホリエモン哲学の日本社会への波及。
それをパニッシュする必要性を感じていたのだろう。

まあこれは、検察からの踊る株社会への警鐘という意味もあると思う。

結局、ライブドアの事業は、
こうした株取引を含め金融事業だったことは明らかで、
ネットとかITの名前を借りた金融業者だった。

ライブドアは被買収企業の関係者ばかりでなく、
市場をも「偽計」にかけたということ。

検察はそこにメスを入れたかったに違いない。



    
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# by leilan | 2006-01-17 19:10 | 俳句

『俳句』  降るあめりか

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    夕千鳥啼ひて金紗の雨となる


    風邪の子に長きいちにち桃缶と


    リカちゃんの股たしかめる冬ごもり


    コサック舞踊団ひっぱて来る寒気団


    お返しの蜜柑の器量選びけり


    湯豆腐に掬ひとらるる明かりかな


    パンツの護謨はぢきつまらぬ避寒宿


    わが肩に還るところのなき暮雪


    火を焚けよ赤の広場にバラライカ


    英文法おぼえしころの炬燵かな




■金正日の中国訪問

テレビカメラが明らかにそれと分かる姿を広州で捉えているので、
憶測(ロシアに行ったとか、北京で入院したとか)そのものは
範囲の狭いものになりつつある。

それにしても中国もよくあんなことを許しておくな、という気がする。

よほど本人が暗殺を警戒しているのだろう。
それだけ自分は狙われていると疑心暗鬼になっている。
そうでなかったら、あれほどの警備を頼みはしない。

せっかく国を出て発展しつつある中国の都市を見たのだ。
それを自分の国の発展に生かす術を身につければ良い。
しかし、あの政治体制では無理だろうよ。

日本が発展したのは、
何よりも自由に物事が言える政治体制があったからで、
思ったことも言えない厳格な政治体制下で
市場経済が花咲くはずがない。

世界で一番金正日を嫌いなリーダーはまごうことなきジョージ・ブッシュ。
その次が、なんと中国の胡錦濤だという。
どうも政治的に肌が合わないらしい。

それはさておき、マカオの銀行問題。
香港金融界の大物が所有する「バンコ・デルタ・アジア」。

米財務省は昨年9月、
北朝鮮の政府機関や関連企業と違法活動を行っているとして、
この銀行を「マネーロンダリングの主要懸念先」に指定、
米銀との取引を禁止した。
同行は容疑を否認し、北朝鮮との取引停止を発表した。

北朝鮮は昨年11月の六カ国協議で、
この制裁措置解除に関する米朝協議を要求。
金桂寛外務次官が今月初め訪米の予定だった。
しかし、米国が「説明はするが交渉はしない」としたため、
金次官は訪米中止を米側に伝えていた。

従来から伝えられていることだが、
マカオは北朝鮮にとって海外重要拠点。
また金正日総書記の私生活にかかる資金調達企業とされる
「朝光貿易」もマカオにある。

韓国の金大中前大統領の北朝鮮への秘密送金も
マカオの銀行口座が使われた経緯があった。
アメリカは、マカオやこの銀行が、
偽米ドル「スーパーK」の流通拠点として知られていることを、
特に大きな問題としている。

このマカオの銀行の北朝鮮との取引停止は、
金正日総書記を初めとする金ファミリーに大きな打撃になっているという。
この問題を打開しに中国に行った可能性が高いが、
同時に抗生物質の調達も行っている可能性があるらしい。

一方中国サイドは、
胡錦濤が政治的に肌が合わない金正日体制に対して、
言ってみれば最後通牒を突き付けているのかもしれない。

今年は北朝鮮情勢は大きく動く可能性がある。


b0048657_5164891.jpg  初暦月火水木金正日


  土筆摘む金正日の火宅かな


  喜び組乳房はげしき落花浴ぶ


  シークレットブーツ春の渚にまろびけり


  簾あげれば金正日に降るあめりか


  
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# by leilan | 2006-01-16 06:53 | 俳句

『秀句鑑賞』

 さやうなら笑窪荻窪とろゝそば  摂津幸彦


季語は「とろろ」で秋だが、冬にも通用する句であろう。
物の本によれば、正月に食べる風習のある土地もあるそうだから「新年」にも。
ま、しかし、摂津幸彦はさして季節を気にしている様子はない。

「荻窪」は東京の地名。
「さやうなら」と別れの句ではあるけれど、明るい句だ。

「さやうなら」と「とろゝそば」の間の中七によっては、
陰々滅々たる雰囲気になるところを、
さらりと「笑窪荻窪」なる言葉遊びしているからだ。

さらりとした別れの情感を詠みたかったということ。
たとえば、学生がアパートを引き払うときのような心持ちを。

このときに「笑窪荻窪」の中七は言葉遊びにしても、
単なる思いつき以上のリアリティがある。
ここが摂津流、余人にはなかなか真似のできないところだ。

笑窪は誰かのそれということではなくて、
作者の知る荻窪の人たちみんなの優しい表情を象徴した言葉だろう。
行きつけの蕎麦屋で最後の「とろゝそば」を食べながら、
むろん一抹の寂しさを覚えながらも、
胸中で「さやうなら」と呟く作者の姿がほほえましい。

蕎麦屋のおじさんも「じゃあ、がんばってな」と、
きっとさらりと明るい声をかけたにちがいない。

いいな、さらりとした「さやうなら」は。

(とろろ・秋)
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# by leilan | 2006-01-16 06:17 | 秀句鑑賞

『俳句』  身ほとりに薔薇ちらかして

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    どの鮭も目に塩ためて吊られをり


    学校へむかふ除雪車給食車


    白菜漬けるウルトラの母の会


    吊り橋の真ん中あたり寒波来る


    セーターがアラビア糊に好かれてる


    マスクとり裸の鼻を人の前


    冬帽子にわたしの弱虫がゐる


    寒雀少女の如くふりかへる


    寒卵いまだ温きを子の頬へ


    おづおづとふぐりおとしの男かな

       ふぐりおとし=褌を落して厄を逃れるのだが、
                人目に触れては駄目になる。冬の季語。
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# by leilan | 2006-01-13 22:34 | 俳句

『秀句鑑賞』

 逢ひにゆく息の白さにおどろきし  加藤三七子


恋する炎はたとえどんなに寒い冬でも燃え上がる。
誰にも消すことはできない。

でも、大好きな人に会いに行く途中、
自分の吐いた息の白さに思わずびっくりしてしまった。

こんなに寒いのに、どうして私は飛び出してきたんだろう。
今夜会わなくたって、明日でもよかったのに。

でも、恋にためらいは禁物だ。
会いたい、と思った瞬間を逃してはならない。
あの人のもとへ走り出しているこの時は、
息の白さすら愉快に思えるのだ。

(白息・冬)
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# by leilan | 2006-01-12 20:53 | 秀句鑑賞

『俳句』  身から出ました錆ゆえに 

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    星空にネリカンブルース息白し


    ずわい蟹外反母趾を疑へり


    煮こごりを踏んでしまひし孤独かな


    寒の雨摩天楼より垂直に


    山茶花の裏であやとりひそやかに


    極寒や板かまぼこの正義感


    ハイハイと手を上げて来る寒波かな


    新海苔や二三が六のにぎり飯


    寒月や標本室のデスマスク


    一月の頭痛の種に水をやる




深沢七郎著『生きているのはひまつぶし』読了。

「動物の中で人間が一番バカで悪いヤツ」のくだりから。
 
  日本人の人口が増えた方がよいというのは、みんな悪いヤツが言うこと。
  人に働かせて、自分はのうのうと暮らそうとしている。
  子どもが増えれば、奨励金をやる、というのは悪いヤツ。
  労働力を増やすためにそういっているだけ。

  自然淘汰にまかせるのが一番。
  戦争、洪水、病気、自殺は自然淘汰だよ。
  人が増えると、困るから。

1987年に没した深沢七郎が、18年前に残した言葉だ。
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# by leilan | 2006-01-12 20:28 | 俳句


バッカスの神さまに愛されたい
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